トラック運送業は違法長時間労働は当たり前の業界

 

先日、千葉県の運送会社「関東西部運輸」が違法長時間労働で事業許可の取り消し処分されました。

自分も過去に路線業者の下請けで関西から関東の路線便を走っていたので、この会社のドライバーさんとはよく仕事で一緒になることが多く、びっくりしたというのが第一印象である。

この「関東西部運輸」は大手運送会社の下請けをしている会社との報道があったのだが、その大手というのは西濃・トナミ等の特積み業者のことである。

特積み業者の仕事というのは、夕方にターミナルに着車して集配車が集荷してきた荷物を2~3時間かけて積み、積み終わったら競争するかのように目的の店所1~3か所向けて走っていき、荷降しをするのが業務内容である。

当然、積み降ろしは手作業がメインとなるので時間がかかる。

中には、ヤマト運輸や日本郵便のようにカゴ車を積み降ろしするだけの業者もあるので、このような仕事だと勝負が早いので労働時間の短縮という点では、メリットかもしれない。
但し、着時間の指定等が厳しいということがあるようである。

労働時間

トラック運送業界において労働時間という定義が少し難しくて、待機時間は労働時間なのか休憩時間なのかという論争がある。

自分がトラック運転手をしていたころ感じていたのは、運転手たるもの待つのも仕事のうちなんて感覚でいた。
この感覚ならば待機は仕事である、積み込み先に行って順番待ち・製品待ち等待つことは日常茶飯事であったし、関西から関東に向かうのに製品の出来上がるのが23時頃で到着は朝の8時なんてのはよくあった。この場合は高速代は荷主が出してくれたが、それでもかなりキツイ運行を目を擦りながらこなしたりしていた。
製品が出来上がるのが23時と最初から分かっていれば、それまで家に帰るなり出来るのだが、殆ど場合「出来たら呼びに行く・電話する」的なことを言われて待機場でひたすら待つというのが多いのではないだろうか。
また、長距離の帰り荷の場合、たとえ出来上がり時間が分かっていたとしても、現場の待機場や近隣まで行って待機するとかになる。

このような待機については仕事なのか休憩なのか、非常に線引きの難しいところである。

一般の会社員の感覚ならば、就業しているので勤務時間と考えるのだが、トラック運送業の場合トラック内で仮眠をすることができるので休憩時間とみることもできる。

只、この長距離トラック運転手という仕事は、

「寝る時間を確保するのも仕事」
「寝る≠休憩時間とは一概には言えない」

なのである。

だから労働者側からすれば待機時間に仮眠するのも仕事だと思うのは当然である。

しかし、雇用側からすればトラックが止まっている時間、即ちデジタコが停車を示している時間は休憩とみなし、労働時間から削る会社もあるようである。

昔は、運賃歩合で給与を計算する会社が多かったが、昨今の残業手当の未払い等で労働争議になるケースが増えている影響か時間で給与を計算する会社が多くなっているが、このような会社では、デジタコで労働時間をはじきだすようである。

閑話休題、

自分が路線業務の下請けで仕事していた時は、積み込みの2~3時間はというか、会社の車庫出てターミナル積み込み完了まではデジタコのカードを入れないで、積み込み完了出発になってカードを入れるなんて姑息なことをさせられていた。

なぜ、こんなことをするか・・・労働時間を減らせるから、

この会社の場合は監査対策が目的だったので、このようなことをしても運転手の給料には影響がなかったので特に不満はなかった。

実際の長距離運送では、拘束時間が長くなるのは当然であって、
杓子定規に長時間労働が悪とは言えない。

しかし、近年のコンプライアンス重視の流れの中で、長時間労働をさせるとブラック企業扱いされるのも事実なので、大手の運送会社は自社のトラックでは長距離をせず、長距離の仕事は庸車つまり下請けにまわすのが常となっている。
そのことによって、大手の運送会社はクリーンなイメージを保とうとしている。

しかし、日本のトラック運送会社は90%が中小零細業者で、殆どが下請けの仕事をしている会社である。

下請けの運送会社になると、労働条件が悪くなるのは当然で、手積みが多くなったり、運行スケジュールがきつい等の仕事が回ってくることが多い。
こんなことをしているので、大手は求人を出すとすごい倍率の応募者が殺到するが、中小の運送会社では求人を出しても人が集まらなかったりという現状があるので、運転手が減ればさらに運行が厳しくなるといった悪循環に陥るのである。

では、なぜ長時間労働をしなければいけないのであろうか。

そもそもトラック運転手というのは、免許が有って頑張ればそれなりの高給を得ることができた職種であった。

当然、昔は労働環境が良かったかというと、そんなことはなく労働時間なんて厳しく言われることも無く、現在よりも長かったかもしれないし、
自分も関西から関東に週5発とか走っていた。
大先輩の方々が運転手をやっていたころからすれば給与水準が下がっていたとはいえ、今よりは稼げていた時代の話である。

続く